三寒四温の時期も過ぎ、桜の季節到来。桜前線北上のニュースがテレビやラジオから聞こえてくるようになりました。職人たちの遊び心に火が点きます。かまぼこ職人たちは、昔から、四季折々の季節の移ろいを肌で感じながら、その思いをかまぼこの中に込めてきたのです。
お花見弁当の中の一片の桜。鮮やかな桜の彩りに春の訪れを感じます。江戸っ子たちが春のお花見で楽しみにしていたのが、細工物と呼ばれる『切り出しかまぼこ』。しなやかな弾力と爽やかな食感に、春を感じる一瞬です。かまぼこをつまみに花見酒をぐいっとあおれば、見上げる満開の桜に、気分は春爛漫――。
細工かまぼこには、「切り出し」「刷りだし」「絞り出し」と「一つもの」がありますが、「切り出し」は金太郎飴のかまぼこ版。職人の頭の中にある絵を、付け包丁を使い、一色、一色、丁寧に重ねてゆく繊細なさばきは、見ているこちらも肩に力が入ってしまうほど神経を使う作業で、伝統技術の極みであり、かまぼこ造りの中でももっとも習得が難しい高度な技術とされています。
いまでは、切り出しかまぼこを造る職人が、少なくなったのは残念ですが、機械を使ってかなり細かい模様が再現できるようになり、季節の花々、アニメのキャラクターや子供たちが喜ぶ車や電車など、お弁当やオードブルに利用されているようです。
小田原蒲鉾組合が毎年、3月末に開催する小田原かまぼこ桜まつりでは、名人による「切り出し」の実演を見ることができます。足を運んで見てはいかがでしょうか。ことしは、3月28、29日に小田原城二ノ丸広場で行われます。