「カマトト」という言葉は、実は、かまぼこが語源なのです。かまぼこが魚(とと)で、できていることは、日本人なら知っている常識でしょう。知っているくせに、ぶりっ子して「わたし、知らない」なんて答える娘を「カマトト」ぶるって笑ったりします。
さて、冷凍技術のなかった昔、かまぼこは、すべて鮮魚から作っていました。早朝から市場に出かけ、魚の良し悪しを見分けて仕入れる。この目利きがかまぼこ職人にとって最も大事な技術のひとつとされ、良質なかまぼこ造りには欠かせない素養でした。
昭和30年代半ばになって、かまぼこ製造に一大革命をもたらす「冷凍すり身」が発明されました。長期保存が可能で、魚の頭や内臓、骨を処理済みの「冷凍すり身」は重宝され、今日では、かまぼこ原料の70%以上を占めるまでに、なっています。
「冷凍すり身」の登場で、3K職場とされていたかまぼこ製造の作業環境は劇的に改善されました。異臭に悩まされることもなく、早朝からの魚の処理がなくなり、不安定な水揚げに左右されることなく、計画的に大量にかまぼこを作ることが可能になったのです。
機械化も進み、昭和50年代には、年間生産量は100万㌧を突破しました。画期的な「冷凍すり身」は、業界に一大隆盛期をもたらしたのです。
その一方で、味が画一化し、かまぼこの魅力である地域色が薄れ、価格競争をを引き起す一因になったと言われています。かまぼこ生産量は、昭和50年代をピークに、低迷時代を迎え、最新の統計では、50万㌧を行き来しています。
当初、スケトウダラだけだった「冷凍すり身」の原料は、今ではイトヨリダイ、ヒメジ、ハモ、グチと、多彩な魚種に拡大し、様々なタイプの「冷凍すり身」が開発されるようになりました。かまぼこ業者は、日夜、配合割合を研究し、地元に水揚げされる生鮮魚を活用するなど、地域の特性を活かした独自の製品づくりに取り組んでいます。
最近では、量販店売場にも、地場の生魚を原料とした地域色のある個性的なかまぼこが販売されるようになっています。一度、お試しを。