ひと時代前なら「かまぼこが、魚(オトト)からできている」のは、誰もが知っている常識でした。だから、「カマトト」という言葉も成立します。
ところが、今の小学生で「かまぼこが魚からできている」のを知っている生徒はどのくらいいるでしょうか。「カマトト」も死語になりつつあるようです。
事実を知るには、実際に、自分で体験するのが一番です。論より証拠。かまぼこの作り方は意外にも実にシンプルです。
用意するのは、新鮮な白身魚(脂の少ない魚)と食塩だけ。道具だって、すり鉢くらい。拍子抜けするほど簡単です。
魚のうろこを取って、頭を落とし、内臓をきれいに取り去ります。丁寧に水洗いした魚を三枚に。三枚とは、魚の骨から肉をそぎ取った状態で、身肉が2枚と骨が1枚残るのでこのように呼ばれます。
三枚に卸した魚肉を、まな板の上で、包丁でたたきます。細かくした身肉をすり鉢で、さらに細かく擂(す)り潰(つぶ)す。擂潰(らいかい)という言葉は、かまぼこ職人が使う専門用語。すり鉢を氷で冷やしながら擂潰すると、より美味しく仕上がります。
少量の食塩を加え、さらに、擂潰(らいかい)してゆくと、それまで、ぼそぼそとしていた魚肉に、徐々に、粘り気が出てきます。かまぼこ特有のプリプリとした食感を生み出す魚肉タンパク質が、溶け出してきた証拠です。表面に艶が出てきたら、擂りあがり。
あとは、擂りあがった魚肉を、蒸したり、焼いたり、ゆでたり、揚げたり、お好みの調理方法で。自家製のちくわ、さつま揚げ、はんぺん、板かまぼこの出来上がり。かまぼこが魚から作られていることが体験できると思います。