かまぼこ千年
平安時代、永久3年(1115年)に宮中晩餐の献立に絵入で残されている文献が、蒲鉾が登場する最古のものとされています。2015年にはそこから900年目を迎えますが、魚肉をすりつぶして熱を加えた調理品は恐らく千年以上前から食されていたでしょう。
古来、蒲鉾は日本人の食卓を彩り、健康づくりに役に立ってきたと自負するところでありますが、近年、さまざまな種類の蒲鉾が生まれ、その消費も全世界に広がって「かまぼこ」は「Kamaboko」になってきました。日本人よりもむしろ外国の方がたのほうが、自由な発想で新製品を考え出してくる時代になりそうです。
先日、私はイタリアの工業デザイン会社の社長の訪問を受けました。和食の見聞に来られたのですが、そこですり身に出会って「なんと面白い素材でしょう。形も色も味も、こんなに可能性ある食品素材を見たことがない、大変興味深い」とおしゃっていました。私たちはあまりにも生業に長年どっぷりと浸かっていて、すり身の持つポテンシャル、蒲鉾の未来の可能性に気づいていないことにゴツンとやられた思いがしました。食生活がますます多様になってくる日本においても、さまざまな料理素材としての蒲鉾の未来をやわらかい頭で考えていくことを、わが業界の若い方々に期待したいと思います。
一方、食品としての基本的な役割にもしっかりと眼を向けていくことも肝要です。食されて消化吸収され健康にどれだけ役に立つか。全蒲では過去数年かけて蒲鉾の健康機能性を多くの学識者と協力して研究を重ねてきました。そのなかで、極めて抗酸化性能が高いことがわかり、がん抑制、アルツハイマー予防、血圧安定、血糖値抑制など驚くほどの機能性が証明されました。それらはまだまだ世に広く知られておらず、業界としての発信不足を猛省するところです。しかし千年以上食べつがれてきたのは、そこに訳があると思えてなりません、2015年は、大いに喧伝していきたいと考えております。
また、蒲鉾の衛生管理は何よりも大事であり、当連合会は研修会を年2回、20年近く開催しています。HACCP工程管理の教材を揃え、指導、相談に応じています。アレルギー物質などの安全対策にも近年取り組んでおり、今後も継続して衛生管理に取り組み安心安全な製品を提供していきたいです。
全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会 代表理事会長 鈴木博晶
【月刊「食と健康」平成26年12月号巻頭言より】